決闘裁判―ヨーロッパ法精神の原風景

決闘裁判―ヨーロッパ法精神の原風景 (講談社現代新書)

決闘裁判―ヨーロッパ法精神の原風景 (講談社現代新書)



「決闘裁判」というのは、中世の西ヨーロッパで行われていた、
1対1の決闘の勝者を裁判の勝者とする裁判形式です。


元々、決闘裁判は熱湯裁判などと同じように神判の一種として
始まったそうです。
神判自体はかつて日本にもありましたし、世界史的に珍しくは
ありませんが、自力救済を重視するゲルマン人の精神性により、
決闘裁判だけが残存することになったとか。


近代の西欧文明化の中で決闘裁判も野蛮だという理由で減少していくのですが、
イギリスでは19世紀まで決闘裁判の実施例があります。
そして、イギリスの精神性を最も色濃く継承しているのがアメリカであり、
アメリカの裁判制度の「当事者主義」はこの決闘裁判を受け継いだものだ、
という説が展開されます。
この流れはかなり納得するものがあり、面白く読めました。


決闘裁判を戦争にまで波及させる議論はどうかと思いましたが、
アメリカ/ヨーロッパの個人主義を理解するにはいい本だと思います。