現代殺人論

現代殺人論 (PHP新書)

現代殺人論 (PHP新書)



これまた、タイトルに釣りが感じられますが、
内容は分かりやすくて良い本だと思います。
著者は精神科医で、自身の業務から得た知見や
調査結果を交えて、殺人という現象を
科学的に分析しています。


まず驚くのは、「治安は悪化していない
(むしろ年々良くなっている)し、少年犯罪も
凶悪化していない」という調査結果。
統計数値を示して事実はこうである、
と説明されて納得。
危機感を煽って存在を誇示するという、
狼少年的なマスコミの常套手段が原因であろうとの
分析は的を得ていると思われます。


本の後半は異常犯罪の心理分析に重点が移ります。
パーソナリティ障害の診断条件の一つ一つに、
当てはまってるとか当てはまってないとかで
一喜一憂してしまうのは素人なので許してください。
あと、目からウロコだったのは、
狩猟社会よりも農耕社会の方が
大規模な殺し合いが多い、という事実。
要するに戦争です。
狩猟社会は農耕社会に比べて生産性が低く、
他者の富を奪おうにも他者も富を持っていない、
むしろ助け合わなければ生きていけない社会なのです。
歴史を振り返れば、なるほどとうなずけました。
先日読んだ「国家の品格」では欧米人のことを
「狩猟民族だから野蛮で残酷」というようなことが
書かれていましたが、ウソですね。