ローマ人の物語〈20〉悪名高き皇帝たち(4)

ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫)



ローマ人の物語」の第二十弾は
五代皇帝ネロ。


ネロといえば、666を初めとして
キリスト教の敵としての側面しか知らなかったので、
いろいろ奇矯な行動も多いものの、
意外と治世は安定していて驚きました。
ただ、その安定ゆえに、ローマ大火以降の
ネロ転落の軌跡に今ひとつ納得いかない部分も
あります。転落があまりにも急激すぎるので。


この巻でネロ以上に印象に残るのは将軍コルブロ。
ネロとセネカの諸々の失策にも関わらず、
帝国東方の対パルティア戦線を支え
和平を継続させた優秀な将軍です。
敵からの敬意さえ獲得したという厳格で公正な
性格でありながら、
伝統に捕われない柔軟な発想と行動力を持ち、
そのリーダーとしての資質は
今の時代にも十分通用する
素晴らしいものです。
ネロ暗殺の陰謀に連座する形で
命を散らせることになってしまいますが、
大火よりもむしろコルブロを
死なせたことの方がネロの破滅を
導いたとの見解に賛成です。