ガリア戦記

ガリア戦記 (岩波文庫 青407-1)

ガリア戦記 (岩波文庫 青407-1)



2000年以上の昔、ローマの英雄カエサル
ガリア(現在のフランス、オランダ、ベルギー、ドイツ西部)の
ガリア人を武力制圧した際の
ローマ元老院への報告書。


ガリア戦記全8巻のうちの、カエサル自身が記した
1〜7巻の日本語訳。
(ちなみに8巻はカエサル側近のヒルティウスが
記したガリアの戦後処理。)
ただし、第1刷発行が1942年と古いため、
日本語訳とは言いながら現代口語から見ると
耳慣れない言葉や難読の漢字が使用されており、
読みにくい。
あと、これはこの本の欠点ではないのですが、
多くの部族名、地名、人名が登場するため、
通勤中の読書のお伴としては状況を把握するのが
大変です。


印象に残ったのはカエサルの部下への対し方。
カエサルガリアにおいて、何度か部下を
叱責しています。その叱り方がうまい。
例えば、戦役1年目の初のゲルマン人との対戦を
怖れる部下に対しては、まず客観的事実から勝利が
疑いないことを説明し、
その上で皆がついてこなくても私は決行する、
と宣言します。
非常に論理的でありながらも、事に臨んでの
指揮官の強い決意が感じらる名演説です。
また、7年目のウェルキンゲトリクスとの
対戦の中で撤退命令を無視して敵に突っ込み
敗退した兵に対しては、命令違反は叱りつつ、
敵に突撃した勇気は褒めて、
「武勇やたくましい士気に劣らず服従と自制を
期待する」と伝えます。
しかもその後で、
「負けたのは地形が不利だったからであって、
敵が強かったからではない」なんてフォローを
入れているところがほほえましい。