はじめての死海写本

はじめての死海写本 (講談社現代新書)

はじめての死海写本 (講談社現代新書)



死海写本」。
素人ならこのネーミングのインパクトだけで
圧倒されそうです。
死海」はイスラエルとヨルダンの
中間あたり(国境であるようなないような微妙なところ)に
存在する湖のことです。
死海文書」と呼ばれることもあるようですが、
第二次世界大戦の直後に死海のほとりで発見された、
ユダヤ教徒(の一派)が残した書物の内容について
解説された一冊です。
書物が記された時期は紀元前1〜2世紀と見られ、
ちょうどキリスト教誕生直前の時期にあたることから、
キリスト教に関する触れてはいけない秘密が
内容に含まれているのではないか、
との怪しい噂が飛び交ったこともあるそうですが、
この本はそれをきっぱり否定してくれます。


死海写本」の内容は、要は旧約聖書なのですが、
時期が2千年以上も昔ですので、
現在の旧約聖書と構成や内容の差分が
生じています。
その差分から、当時のユダヤ教の様子を読み解こうと
試みています。
また、いわゆる聖書の暗喩をふんだんに使った
言い回しについても解説が加えられていますので、
素人でもそれなりに読めます。
(ただし、死海写本の全文が紹介されているわけでは
ありません。)
でも、大雑把でもよいので、旧約聖書に関する
予備知識があった方が理解の助けになるのは
確実です。


特に印象に残ったのは、トイレの話。
トイレは不浄なものなので遠くに設けないと
いけないそうで、戦場では陣地から880m、
聖地エルサレムからは1330m離れたところに
作らないといけないそうです。