世界史のなかの満洲帝国

世界史のなかの満洲帝国 (PHP新書)

世界史のなかの満洲帝国 (PHP新書)



日本では「満洲」と言えば、
罪悪感とともに振り返るもの。
中国で「偽満」と言えば、
憎悪の対象であり、歴史の汚点。
本書はそのような感情的な議論からは距離を
置き、純粋な歴史学として満洲を語ろうと
する試みです。


1931年に満洲国として建国され、
1934年に帝政に移行、
1945年、日本の敗戦とともに消滅した
満洲帝国。
この本では、この満洲帝国を、
満洲人自身の歴史をはじめ、
日本史、中国史、ロシア史、モンゴル史の交点として
浮かび上がらせます。


そのために、中国史始皇帝から、
日本史は漢倭奴国王から、
モンゴル史はチンギス・ハーンから、
ロシア史はタタールのくびきから、
それぞれ書き起こしていくのですが、
読んだ感想は、
「まわりくどい・・・。」
全10章のうち、ようやく第7章で
日露戦争にまつわる日本とロシアの
満洲利権の話題が始まりますが、
満洲帝国が話題の主体となるのは第8章以降。
通史として把握するためには
確かに良書と呼べると思いますが、
満洲の歴史を語るためには
ここまでする必要があったということでしょうか。


内容は、とりわけ新しい発見などが
提示されているわけでも
突飛な主張が展開されるわけでもなく、
非常にオーソドックスな記述で一貫しています。
ただ、ロシア史、中国史の視点も交えて
まとめられているため、
満洲に対しては日本もロシア(ソ連)も中国も
スタンスは大して変わらないことが
分かりやすいと思います。