ヒトラー・ユーゲント―青年運動から戦闘組織へ



ヒトラー・ユーゲントの設立経緯から発展、
そして第二次世界大戦までを追いかけます。


ヒトラー・ユーゲントとは、ドイツのナチス政権下での
青少年組織です。
この本では、バルドゥーア・フォン・シーラハという、
耳慣れない人物を通してヒトラー・ユーゲントを追います。


第二次大戦以前、もともとドイツには
ボーイスカウトに類似した健全な青少年組織が
存在し、その中の一つとしてナチスにも青少年部門が
ありました。
ナチスの政権掌握後、ナチスの何でも一元化政策の下、
全国の青少年組織もナチス配下のヒトラー・ユーゲント
一元化されていきます。
シーラハは、ヒトラー・ユーゲントの設立には
関わっていないのですが、内部の権力闘争の末に、
ナチス政権獲得以前の1932年にヒトラー・ユーゲント
最高責任者である「全国青少年指導者」の地位に就き、
大戦勃発後の1940年までその地位にありました。
シーラハはヒトラーの期待に応えるべく、
青少年の教育を司る学校、教会などと闘争し、
ヒトラー・ユーゲントによる青少年組織一元化に
多大な貢献を果たします。


この本を読んでいて思うのは、子供や保護者たちが
ナチスに染まっていく過程が非常に自然な流れに
見えることです。
子供たちはヒトラー・ユーゲントの各種イベントに喜び、
保護者は「健全な」イベントで子供たちをまとめていく
ヒトラー・ユーゲントに進んで子供を任せました。
ヒトラー・ユーゲントに参加しない子供は異質な者として
白眼視され、いじめられました。
今の日本でも、「健全」というキーワードは親を引き付け、
子供を縛る上で有効です。「非健全」な子供は白眼視され、
いじめられるものです。ナチスの思想は現代においても、
決してあり得ないような過去の産物ではないのだなと
感じます。