日本の歴史〈3〉奈良の都
- 作者: 青木和夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/07/01
- メディア: 文庫
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奈良時代の前期、中期を紹介する一冊。
平城遷都から聖武天皇、孝謙(称徳)天皇の時代までを
取り扱います。
正倉院文書を中心とした考古学的調査の結果を
踏まえて、貴族や庶民の生活を映し出そうとしているのが
特色。
平和な時代です。藤原広嗣の乱や藤原仲麻呂の乱などもあり、
平和ボケはしていないだろうと思われますが、軍事的な内容は
あまりありません。それに代えて、平和な時代の中での庶民の
暮らしにスポットが当てられています。
万葉集には庶民の歌も含まれていますが、そういったものの
紹介をはじめ、郡司レベルの生活の実態や村落のあり方、
庶民から見た律令の施行状況など。
結構、抑えた筆致で通して描かれていて、客観性に富んでいる
反面、長屋王の悲劇性や藤原仲麻呂の権勢とその没落、同じく
道鏡の権勢と没落などは淡々としすぎていて抑揚に欠ける
感じがしました。小説ではありませんので当然といえば当然
ですが、読み物としては読み手の想像力が必要な書です。
正倉院の宝物を巧みに使用していて、天平文化の華やかさは
分かりやすい構成になっていると思います。
奈良時代の勉強の基礎としては良書でしょう。