豊かさとは何か

豊かさとは何か (岩波新書)

豊かさとは何か (岩波新書)



日本の社会問題に切り込んで、ヨーロッパ社会との
対比の中で豊かな生活とは何かを問います。


初版発行が1989年ということで、ちょうど20年前の
本です。とりあげられている社会問題は、教育、労働、
土地・住宅、老人医療・介護、環境といったところです。
読んでみると非常に耳が痛く、読み進めるほど心が
暗くなっていきます。
しかもほとんどの問題がここ20年、何も改善されてない
ようなんですよね。悩ましい問題です。


私はこの著者とは違って、日本は十分に豊かで安全で住みよい
国だと認識していますので、必ずしも意見が合うわけでは
ありません。
しかし、私の両親も結構な年齢なので老人問題は身に
つまされます。やはり両親には幸せに長生きしてほしいと
願っていますから。
ひとつ気になったのは、著者は西ドイツと日本の福祉を
比較して西ドイツの先進性を説かれているのですが、
消費税の問題には全く触れていないのですよね。
ヨーロッパ各国の消費税は20%前後の高率に設定されていて、
いわゆる「高負担、高福祉」なんです。介護ヘルパーや
学校教員などを充実させようと思えば、財源問題は避けて
通れない問題です。
本書ではそれに全く触れず、ただ西ドイツの福祉の充実だけを
称賛しているんですよね。これでは議論がやや一方的だと
感じました。