ローマ人の物語〈30〉終わりの始まり〈中〉

ローマ人の物語 (30) 終わりの始まり(中) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (30) 終わりの始まり(中) (新潮文庫)



ローマ人の物語」の第三十弾は、五賢帝最後の一人
マルクス・アウレリウスの後編と、その子コモドゥス


「哲人皇帝」とあだ名され、思索にふけることを
喜びとするマルクスですが、その性向にもかかわらず、
治世の大半を周辺民族のローマ侵入対策に費やします。
養父であり先代皇帝でもあるアントニヌス・ピウス
おかげで戦場を知らずに育ってきたマルクスに、この
生活はつらかったことでしょう。
マルクスに対する著者塩野さんの同情の思いが
あふれています。


そしてコモドゥス。ローマの衰退はこの皇帝から始まった、
と言われているそうですが、それほどあからさまな
暴君ではありません。施策としては、「何もしなかった」
だけの人です。やったことといえば、コロッセオで遊び
まくったことと、皇帝暗殺未遂の廉で義兄を処刑したこと。
一般市民にはそれほど迷惑は掛けていません。
最後には暗殺されますが、その背景もいまひとつ不明瞭で、
恨みが原因ではなさそうです。結局31歳で暗殺される
まで、無邪気なお子様だった人です。


いわゆる英雄タイプの人物が登場しない巻ですので、
やはり躍動感に欠けると言いましょうか、精彩に欠けると
言いましょうか、それは歴史の展開がそうであったため
であって著者の責任ではないかもしれませんが、
読み物としては1.5流といった感じです。
カエサルトライアヌスの思い出語りでページが進められる
こともしばしばあり、筆を進めるのが苦しそうにさえ
見えます。この先、どうなることやら…。