ローマ人の物語〈30〉終わりの始まり〈中〉
ローマ人の物語 (30) 終わりの始まり(中) (新潮文庫)
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/08/28
- メディア: 文庫
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
「ローマ人の物語」の第三十弾は、五賢帝最後の一人
マルクス・アウレリウスの後編と、その子コモドゥス。
「哲人皇帝」とあだ名され、思索にふけることを
喜びとするマルクスですが、その性向にもかかわらず、
治世の大半を周辺民族のローマ侵入対策に費やします。
養父であり先代皇帝でもあるアントニヌス・ピウスの
おかげで戦場を知らずに育ってきたマルクスに、この
生活はつらかったことでしょう。
マルクスに対する著者塩野さんの同情の思いが
あふれています。
そしてコモドゥス。ローマの衰退はこの皇帝から始まった、
と言われているそうですが、それほどあからさまな
暴君ではありません。施策としては、「何もしなかった」
だけの人です。やったことといえば、コロッセオで遊び
まくったことと、皇帝暗殺未遂の廉で義兄を処刑したこと。
一般市民にはそれほど迷惑は掛けていません。
最後には暗殺されますが、その背景もいまひとつ不明瞭で、
恨みが原因ではなさそうです。結局31歳で暗殺される
まで、無邪気なお子様だった人です。
いわゆる英雄タイプの人物が登場しない巻ですので、
やはり躍動感に欠けると言いましょうか、精彩に欠けると
言いましょうか、それは歴史の展開がそうであったため
であって著者の責任ではないかもしれませんが、
読み物としては1.5流といった感じです。
カエサルやトライアヌスの思い出語りでページが進められる
こともしばしばあり、筆を進めるのが苦しそうにさえ
見えます。この先、どうなることやら…。