「世間」とは何か
- 作者: 阿部謹也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/07/20
- メディア: 新書
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日本の文化を特徴づける概念「世間」。
この書では、万葉の昔からの日本の文学史の中に
「世間」を見つけ出し、その移り変わりを
追っていきます。
この本で扱われる日本文学は、万葉集、徒然草、井原西鶴、
夏目漱石、永井荷風、金子光晴。
これらの作品の中で描かれる「世間」あるいは「世」とか
「世の中」などの使われ方を追っていく中で、
日本人が「世間」というものをどう考え、どう向き合って
きたのかが明らかにされていきます。
徒然草と漱石は読んだことがあったので議論に付いていく
ことができましたが、西鶴、荷風は読んだことがなく、
金子光晴にいたってはこの本で初めて存在を知りました。
議論の題材となるこれらの作品について、幾許かの予備知識が
あった方が分かりやすいかと思います。
それほど細かく現代語訳や解釈が付されてはいませんので、
予備知識がないと置いてきぼりになります。
「世間」というのは日本の文化に特有の概念で、著者は「社会」と
いう言葉と対置して議論を進めていくのですが、外国人に
説明するのは確かに難しい単語ですね。
例えば「世間の目を気にする」などという発想は外国人には
ありません。「協調性」と言ってみれば聞こえはいいのですが、
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」といった発想も、
日本人に特有です。
日本の閉鎖性を説明するときに有効に使える概念かもしれませんね。