二・二六事件―「昭和維新」の思想と行動

二・二六事件―「昭和維新」の思想と行動 (中公新書)

二・二六事件―「昭和維新」の思想と行動 (中公新書)



昭和11年(1936)2月26日、東京で発生した日本陸軍内部の
反乱事件、二・二六事件
本書は、同著者が二・二六事件に関して1965年に出版された
同タイトルの新書の増補版です。本の末尾に一章追加されて
います。


読んだ印象は、非常に難しい本だということです。二・二六
事件に関してある程度の予備知識がある人を読者に想定され
ているようです。事件前後の状況、東京の土地勘、登場人物
の略歴くらいは抑えていないとすらすらとは読めないでしょ
う。著者もまえがきに記されていますが、確かにIV章から先
に読んで、それからI章を読んだ方が理解しやすいかもしれ
ません。
希望としては、せめて人名くらいはふりがなを振ってほし
かったですね。あと、注釈が巻末と章末に分散しているのも
読みにくかったですね。


VIII章「処刑」はわずか9ページしかないのですが、かなり
衝撃的です。二・二六事件反乱将校たちは多くがまともな裁
判も受けられないまま死刑を言い渡され銃殺されるのです
が、その様子が刻銘に記されています。銃殺される直前の、
まさに本当の「遺言」も、全員の分が載せられています。
読み進めようとすると、心に激しい「痛み」を覚える、そ
んな章でした。
真崎大将に対しては、やや感情的ともいえる批判が展開され
ています。歴史書としてはややあるまじき、という気もしま
すがVIII章を読めば、気持ちは分からなくもない、という感
じですね。