日本の歴史 (6)

日本の歴史 (6) 武士の登場 (中公文庫)

日本の歴史 (6) 武士の登場 (中公文庫)



平安時代末期、藤原道長の没後から平氏の滅亡まで。


読み始めて最初に驚いたのが摂関家の凋落ぶり。
前巻では主役だった摂関家が、この巻では関東などの兵乱に
右往左往するばかり。主役は完全に源氏、平氏にとって
代わられます。
しかし、直接に摂関家の没落の原因となったのは
後三条天皇の荘園整理令とその後に続く院政
経済的基盤であった荘園の多くを失い、政治的基盤を上皇
奪われたことで、摂関家は見るも無残に急激に没落します。
感心したのは、摂関家による外戚政治から院政に移った理由が
母系の社会が父系の社会に変貌したことにあるという説明
です。
平安期の貴族社会においては、基本的に「家」は娘に伝えられる
ものであったというのです。唯一の例外が帝王たる天皇家で、
天皇の妃は天皇家に入内することになります。ですが、社会の
基本が母系であるため、天皇の母方の実家すなわち外戚
力を持つのです。
それが平安末期にいたり父系社会へと移り始め、天皇の父、
すなわち上皇へと権力が移っていく、というのです。
なるほど、と思いました。


本書を読んでいて少し気になったのは、叙述が院政の歴史、
源氏の歴史、平氏の歴史といった具合にカテゴリー分けされている
ため、叙述の順序が必ずしも年代順ではないのです。源氏の歴史を
説明するために源義家の死後の源氏家督の争い(12世紀初め)まで
述べたあとに、一方の平氏の歴史を説明するために平維衡(10世紀)
に遡るといった具合です。本書を前から順に読んでいくと、
そういうところでちょっと混乱しました。
それと、武士の発生起源について、本書はまさにそれが本題であり
いろいろ説明がなされているのですが、巻末の「解説」の項で
大どんでん返しがあります。この本を読む人はぜひ最後まで
読んでみてください。