日本の歴史 (8)

日本の歴史 (8) 蒙古襲来 (中公文庫)

日本の歴史 (8) 蒙古襲来 (中公文庫)



中公文庫の日本の歴史シリーズの8冊目。
サブタイトルは「蒙古襲来」
鎌倉時代の後半を描きます。


日本史の書籍でありながら本文の書き出しは
東ローマの大司教の言葉から始まります。
日本はその地理的条件から、「日本史」と「世界史」を
ほぼ完全に分離して学習することが可能ですが、そんな
日本史の中で数少ない世界史とのリンク。
それが元寇です。
本書冒頭では、当時の世界情勢が語られます。もちろん、
モンゴル帝国がメインです。
東ヨーロッパから中国までを征服した世界帝国モンゴルが、
ついに東の果て日本に侵攻してくるのです。


と、ここまでは良いのですが…。
本書のサブタイトルは確かに「蒙古襲来」であり、元寇
メインイベントだと思うのは自然な発想。でもそれは
間違い。本書は500ページを越えるボリュームを持ちますが、
第1回元寇文永の役は77〜109ページ。
第2回元寇弘安の役は110〜136ページ。
なんと本書を半分も読み終わらないうちに元寇
終わってしまうのです。
しかも元寇の失敗はあくまで天候であってまともな戦闘は
行われていないため、記述も淡白。
拍子抜けしてしまいます。


本書のメインとなる、元寇以降の記述内容は日本の宗教史や
社会制度史。政治史もほとんど語られないため、主役となる
のは僧や名もない農民たちだったりします。
鎌倉時代という武家の時代に、公家や寺社の荘園の実態が
どうなっていたのか。鎌倉幕府中枢の北条一門などはよいと
して、末端の御家人はどんな暮らしをしていたのか。
そんなことがメインに取り扱われているため、あまり著名な
歴史上の人物は出てきません。


本書終盤で鎌倉幕府の滅亡が描かれます。元寇よりもよほど
こちらの方が筆に力が籠っているように感じましたが、
終盤になってようやく後醍醐天皇足利尊氏楠木正成
新田義貞などの歴史上の有名人が登場します。
北条氏の最期も鎌倉での戦いの様子など詳細に描かれ、
こちらは結構面白く読めました。
サブタイトル変更した方がいいんじゃないでしょうか…。