〈満洲〉の歴史

〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)

〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)



満洲、今の中国東北部の歴史をまとめた一冊。


満洲の歴史と言えば満洲国。満洲事変で建国され、
第二次大戦末期のソ連侵攻により滅びた国。
もっとも、古くは高句麗から渤海、遼などいろいろな
時代があるのですが、本書のメインは満洲国です。
書き起こされるのは日露戦争のあたりからなのですが、
本題は満洲事変の少し前、奉天軍閥の時代からです。
奉天軍閥の財政状況が載せられていて、これは
珍しい内容だと思います。


満鉄、関東軍。そして満洲国。満洲の歴史とは
言いながら、日本の現代史ですね。
満洲国は日本の傀儡と言われ、確かにその通り
なのですが、実権を握り裕福な生活を享受したのは
日本人の中でもごく一部であり、多くの日本人移民は
貧しく悲惨な暮らしをしていたことが記されていて、
これにはなるほどと思いました。


全体的に、日本の侵略行為の善悪などの主義主張は
あまりなく、冷静で客観的な記述に終始している
印象でした。細かく出典が記されていて資料的にも
配慮されています。歴史に関する書物としては
良書だと思います。主義主張の無さは、少し
物足りなさもありますけどね。