藤原氏千年

藤原氏千年 (講談社現代新書)

藤原氏千年 (講談社現代新書)



日本史において、貴族といえば藤原氏
その藤原氏の歴史を、初代中臣鎌足から、現代の
冷泉家当主にいたるまで1400年あまりの概略を
追います。


藤原氏には藤原四家といわれる南家、北家、式家、京家が
ありますが、歴史上活躍したのは北家。
北家は中臣鎌足の子、不比等の次男房前(ふささき)に始まる
家柄。奈良時代はさしたる活躍は見せないのですが、
平安時代に入ってから天皇家と婚姻関係を結び躍進します。
まず冬嗣の娘順子が仁明天皇に嫁ぎ文徳天皇を生みます。
次いで冬嗣の子良房が娘明子を文徳天皇に嫁がせ、清和天皇
生みます。
良房の跡を継いだ基経も娘を清和、宇多、醍醐天皇に輿入れ
します。こうして北家と天皇家の血の交わりはゆるぎない
ものになっていきます。


基経の跡は忠平、師輔、兼家と続き、兼家の子が道長
藤原摂関政治の全盛期を演出した、藤原道長です。
本書の主人公と言ってもよい道長に関しては、その生涯を
一章を割り当てて詳述しています。
その道長、三女の威子を後一条天皇に嫁がせ、その威子が
女御から中宮に上る儀式の日に読まれたのが有名な歌。
 この世をば我が世とぞ思う望月の
    欠けたることもなしと思えば


道長の跡は子の頼通が継ぎますが、頼通は天皇外戚
なることができず、歴史は院政平氏政権、鎌倉時代
藤原氏の手からこぼれおちて行きます。
その後の五摂家の成立や、戦国時代の公家の生活状況、
特に土佐一条氏の成立など、歴史の主流からは外れつつも
伝統を繋いでいく藤原氏の姿が描かれて行きます。


内容は非常に駆け足で、登場人物も多いのですが、比較的
分かりやすい記述だったと思います。
藤原氏と言えば摂政関白、摂政関白と言えば道長、ということで
道長に焦点を当てたのも成功だと思います。
また武士の世になって以降の公家の在り方も分かりやすく
まとめられていました。良書だと思います。