日本の歴史〈11〉戦国大名

日本の歴史〈11〉戦国大名 (中公文庫)

日本の歴史〈11〉戦国大名 (中公文庫)



中公文庫日本の歴史シリーズ11巻、「戦国大名」。
扱われる時代は、1477年から1568年。
応仁の乱終結から織田信長の上洛までです。


戦国時代はけっこう好きな時代です。非常にパワフルな
時代であり、実力・才能のある人がどんどん出てくる、
魅力的な時代だと思います。
この本の著者は後北条氏の研究者だそうで、話のネタも
後北条氏関連が多いのですが、取り上げられる戦国大名
伊達、後北条、上杉、武田、三好、毛利、長宗我部、島津、
織田、徳川と日本全国をほぼ網羅しています。もちろん、
各氏についての記載は概略レベルなのですけど、こういった
有力な大名たちの成功物語は読んでいて飽きません。


大名たちのみではなく一般庶民や地主階級、いわゆる中間層
など、いろいろな人々の生活様式などの解説もあります。
この時代、農民や商人も活発に活動しており、それに対応
する大名側の苦労も並々ならぬものがあったようです。
一方で、室町幕府将軍足利氏や幕府管領細川氏、さらには
朝廷・公家といった人々の記事は少なめ。実際、時代に
翻弄され実力を失ってしまったこういった人々は政治の
表舞台からは明確に消え去りつつあります。


戦国時代といえば「合戦」ですけど、この本では軍事、戦略
といった観点はやや抑えめで、政治的な流れを追うことの
方がメインです。ただ、軍事動員のための戦国大名たちに
よる支配体制には詳しい記述がなされています。たとえば
検地といえば「太閤検地」、豊臣秀吉が初めて実施したと
思っている人も多いかもしれませんが、検地というのは
戦国大名ならだいたい実施しているものです。やり方は
違いますけど。支配体制についても、常時戦時という現代の
人間では想像が難しい時代背景にあって、その時代にマッチ
した体制とはどういったものか、よく分かるように記載
されています。
戦国時代好きな方にはぜひお勧めしたい本ですね。