源氏物語

源氏物語 (岩波新書 青版 667)

源氏物語 (岩波新書 青版 667)



言わずと知れた日本の古典「源氏物語」の解説本。


この本は初版が1968年なんですね。40年以上前で
す。著者はまだご存命のようです。


実は私は源氏物語を読んだことがありません。古典
の授業で細切れに読んだかもしれませんが、覚えて
いません。で、その私が本書を読んだわけですが、
源氏物語のあらすじは理解できた気がします。女性
から見た男性像というのはこういうものか、と感心
しながら読みました。もちろん、当時は一夫多妻制
であり貞操観念も現代とは違っていると思います
が、垣根越しにちょっとみただけで女性を気に入っ
てしまって、何度も迫って最終的に契ってしまう好
色さは男性像としてはおもしろかったですね。


また、中世の女性が書いた恋愛小説ということで、
ジェンダーの問題から逃れられないですね。今と
なっては想像するしかないわけですが、一夫多妻制
の下での女性の考え方、諦念とも言えるものが物語
の底流となっているんですね。著者の受け売りです
が。この時代だからでしょうけど、若さだけでなく
実家の経済力なんかが重要なんですよね。自分の実
力や努力とは関係のないところで自分の人生が決定
されてしまう状況下で生きなければいけないところ
に諦念があるのでしょう。そういう諦念があること
を思えば紫上や浮舟の生き方も理解できます。


本書を読んでみて、源氏物語の受容史に興味を持ち
ました。このような宮廷恋愛小説が中世から現代ま
で伝わったのはなぜか、ということです。紫式部
書いた原本が伝わっているわけではなく、写本が伝
わっているわけですが、写本自体は男性の手になっ
ており、つまり現代に伝わったのは男性の手による
んですよね。その、男性が伝える際の動機が何だっ
たのか、その写本はだれの手を経て現代に伝わった
のか、といったことですね。母系制が色濃かった平
安時代ならともかく、源氏物語は武士の時代をも生
き残ってきているのですから、男性社会にも受け入
れられる何かがあったのではないでしょうか。