20世紀 大東亜共栄圏

20世紀 大東亜共栄圏 (中公文庫)

20世紀 大東亜共栄圏 (中公文庫)



中公文庫の20世紀シリーズ全12巻のうちの第4巻で
す。ただ、私はこのシリーズは揃えていなくて、
持っているのはこの一冊だけです。第二次世界大
戦の戦前、戦中を通して日本がアジアに構築しよ
うとした大東亜共栄圏について、日本国内や朝
鮮、台湾、アジア各国などの視点からまとめた一
冊です。


大東亜共栄圏といえば、だいたいネガティブなイ
メージですよね。そもそも日本にはアジア解放な
んて壮大な展望はなかったし、欧米との戦争のた
めに取って付けた大義名分ですよね。でも、その
取って付けた大東亜共栄圏が日本や関係各国の人
々に非常に大きな影響を与えました。そういった
様々な影響が綴られています。文庫本ですが、そ
のわりには写真が多いですね。


日本の政府、軍部を蔽った官僚主義の行きつく先
がこの大東亜共栄圏だったわけですが、一方です
ごく日本的な発想のようにも見えます。今でも日
本はアジアから浮いた存在ですが、日本人ってい
つまでもアジアでこういう立ち位置なんでしょう
かね。島国的発想と、明治維新を成し遂げたこと
による中途半端な自尊心が、自分たちとアジアと
の間に奇妙な一線を設けているのではないでしょ
うか。これからアジアは発展していきます。大き
な市場となるでしょう。そのときに、日本はアジ
アの一部であることをアドバンテージとして利用
することができるでしょうか。はなはだ疑問で
す。地理的に近いことは物理的条件として有利で
しょうけど、心情的にはアジアと大して近くはな
いですよね。大東亜共栄圏の歴史的背景とも相
俟って日本は欧米とそれほど変わらない条件でア
ジアで戦っていかなくてはならないでしょう。む
しろ韓国なんかの方が有利っぽい気がします。


日本は歴史の総括から逃げてきました。世代が変
わって、直接の利害関係者が減ってきた今日、歴
史の総括を実施してもいい時期にきているかもし
れません。例えば日本は核兵器に関しては唯一の
被爆国であることをいまだに主張していますが、
被爆と同じ時期に犯したアジアに対する罪を過去
のものとして扱うのでは自己矛盾です。被爆に関
して日本人は被害者のような顔をしますが、第二
次世界大戦全体を通して言えば日本ははるかに大
きな罪を犯しているのです。同様のことは北朝鮮
拉致問題についても言えるでしょう。日本は朝
鮮に対して歴史的に加害者であることを忘れては
なりません。そのことを学び、伝えていく必要が
あるでしょう。そしていつか総括が必要です。総
括というと抽象的ですが、要するに謝罪と弁償で
す。特に金銭的な問題が重要になってきますが、
だからこそ直接の利害関係者が世代交代により
減っていく現状、いずれ総括が必要なのです。で
なければ日本はアジアの成長から取り残されてい
くことになるでしょう。