日本の歴史13 - 江戸開府

日本の歴史13 - 江戸開府 (中公文庫)

日本の歴史13 - 江戸開府 (中公文庫)



中公文庫日本の歴史シリーズ第13巻は「江戸
開府」。本シリーズは全26巻なのでようやく半分
です。本書で扱うのは巻末の年表から拾うと1586
年から1651年まで。江戸幕府成立前夜から、3代
将軍家光の死去までです。


戦国時代という時代はさまざまな個性のある魅力
的な人物を多数輩出した時代でしたが、その終盤
に現れた2つの個性。豊臣秀吉徳川家康。実は
この2人は5歳しか離れていないので、豊臣秀吉
の死と徳川家康の長寿は、まさに天の配剤であっ
たといわざるを得ないでしょう。本書冒頭では、
三河の一大名であった徳川家康が、東海を制し、
小牧長久手で秀吉と戦い、関東に移封されて五大
老となり、関ヶ原で勝利し、やがては秀吉遺児秀
頼を大阪夏の陣で滅ぼし天下人となる、その過程
が記されています。実に、家康は有能な戦国武将
であり政治家であり、幸運であったと言えるで
しょう。


江戸幕府初代将軍家康と、3代将軍家光に挟まれ
て印象が薄いのが2代将軍秀忠。将軍となったの
は1605年ですが、当時は父家康が大御所として実
権を握り、1616年の父の死でようやく政権を握る
もわずか7年後の1623年には子の家光に将軍職を
譲ります。本書でも秀忠の事績はほとんど描かれ
ません。それどころか、関ヶ原に遅参した話など
マイナスイメージの逸話が載せられています。巻
末の解説によると、そんな秀忠も近年では評価し
直されているそうです。


そして3代将軍家光。武家諸法度改訂や鎖国実施
など、徳川三百年の礎を築いたとして評価されて
います。読んでいて思うのは初代家康の頃と比べ
て、ずいぶん平和だなぁ、ということ。戦国時代
が終わって、大阪の陣から数えても30年前後、戦
を知らない世代も増加しつつあり、法による統治
が完成されていく過程は平和であればこそです。
その反面、島原の乱なんかでは、戦が遠くなって
しまった弊害が出ています。また、法による統治
の完成にしたがって、将軍の地位が絶対者からお
飾りへと変質していきます。家光の時代にすでに
その傾向が見られることが記されています。


武士は戦ってこそ武士だと思いますが、徳川三百
年の平和の中、戦わない武士の時代は始まったば
かりです。