ローマ人の物語〈35〉最後の努力〈上〉

ローマ人の物語 (35) 最後の努力(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (35) 最後の努力(上) (新潮文庫)



9月はローマ人の季節だそうで、去年の発売分に
なりますが「ローマ人の物語」35巻です。ディ
オクレティアヌスという皇帝の治世になります。
西暦で言えば284〜305年。


ディオクレティアヌスは、「3世紀の危機」と呼
ばれる軍人皇帝の時代を収拾し「テトラルキア
という、4人の皇帝で帝国を分担統治する機構を
始めた人です。テトラルキアは日本語では「四頭
政」と訳されます。一見すると素人が見ても危な
げな気がするこのようなシステムが採用された理
由は何か。それは「3世紀の危機」の混乱により
辺境は蛮族や隣国ペルシアに侵され、国内の治安
は悪化した極めて困難な状況の中で治安回復や辺
境対策を一人の皇帝で賄うのは不可能と判断され
たからです。4人の皇帝で帝国を四分割してそれ
ぞれを担当し、担当領域内の治安、辺境対策を実
施するのです。


ディオクレティアヌスという人はリーダーシップ
を持った人であったらしく、この危なげなシステ
ムを切り盛りして帝国の治安問題と辺境問題を見
事に解決します。その代わりに、このシステムの
元で帝国は大きく変貌していきます。おそらく
ディオクレティアヌスはこの変貌までは予測しき
れていなかったのでしょう。ローマ帝国は意外な
方向へと流されていくことになります。


もう一つ、ディオクレティアヌスが実施した新し
いことは生前譲位。305年にディオクレティアヌス
は皇帝を引退し、第二次テトラルキアに政権を移
譲します。譲位後のディオクレティアヌスがどう
なるのか、はまた次巻。