ローマ人の物語〈37〉最後の努力〈下〉

ローマ人の物語 (37) 最後の努力(下) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (37) 最後の努力(下) (新潮文庫)



ローマ人の物語」の37巻はコンスタンティヌ
ス大帝の治世、324年〜337年まで。


四頭政下の内乱を統一したコンスタンティヌス
したことは大きく2つ。新都コンスタンティノー
プルの建設とキリスト教振興。この2つはいずれ
も中世への幕開けとされるものです。ローマ元老
院はその存在感を失いつつあり、皇帝の独裁を止
める力はありません。経済格差は広がる一方で固
定化しはじめ、身分制へとつながっていきます。
かつてのローマの活力は確実に失われていってい
るのです。


かわいそうなのはコンスタンティヌスの庶長子ク
リスプス。内乱の時代には父の片腕として活躍
し、副帝の地位を得たのですが、内乱が終わり正
妻の子(義理の弟)が成長するとお払い箱となり殺
されます。罪状は正妻つまり義理の母との密通。
本人は最後まで否認したそうです。


本巻ではニケーア公会議などキリスト教政策に半
分程度割かれています。著者の認識では、キリス
ト教こそがローマ衰退の原因なのでしょう。コン
スタンティヌス自身は改宗しませんでしたが、明
らかにキリスト教を優遇した政策を取り続けま
す。次巻のタイトルは「キリストの勝利」。いよ
いよローマの最期に近づきつつあります。