大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉

大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書)

大正デモクラシー―シリーズ日本近現代史〈4〉 (岩波新書)



岩波のシリーズ日本近現代史の4冊目。扱っている時代は1905年から1931年まで。



戦前の日本には珍しく、平和な時代です。実際、この時期の日本は第1次世界大戦にも参戦してますし、シベリア出兵もしてますし、軍事的な活動をしていないわけではないのですが、前後の時代と比べれば比較的平静です。



大正デモクラシーということで労働者運動がクローズアップされるのですが、すでに社会主義運動が幻想であったことが判明している現代においては、やや色褪せて見えるのは仕方のないことでしょう。いわゆる階級闘争というヤツで、労働者階級と資産家階級は互いに相容れないのであり。労働者の解放のためには資産家階級の打倒が不可欠とするような考え方。ロシア革命が1917年であり、当時はこういう考え方が最先端だったのです。



本書の後半は1923年の関東大震災、1929年の世界恐慌、1931年の満洲事変と、どんどん世相は暗くなっていきます。この時期を扱う文章を読んでいると、やはり今の東日本大震災後の日本と重なる部分があります。

日本人には社会性が高い傾向があり、個人と社会との整合性に非常に意を用いる考え方が強くあります。それは、今回の震災でも世界から称賛されたように悪いことではないと思いますが、それはあくまでも個人のレベルにとどめるべきであって、他人に強制するのはいかがなものかと思うのです。個人の自由や権利を全体の利益に従属させるのは、本書のシリーズで次巻に扱うであろう時期の日本に蔓延したいわゆる全体主義そのものです。「自粛」を強要するような傾向には注意すべきだと思います。もっとも、「今は非常時だ」という意見もあるでしょうけど、戦前の日本も関東大震災、恐慌、戦争と、つねに「非常時」を強調することで全体主義に突入していったことを忘れてはいけません。