星空を歩く―巨大望遠鏡が見た宇宙



天文学者による星空観測の勧めです。


著者は天文学者ですが、そんなに難しい本ではありません。学術的な内容も要所要所にはでてきますが、そこは飛ばして読んでも差し支えないでしょう。本書の内容のメインは、素人にも直感で分かる天体の美しさの紹介と、「星空を見ようよ」という著者のメッセージです。


数ページのカラーページに美しい天体写真が載っていますが本書の大半は白黒の通常に新書本のページです。本文中にも多数の天体写真(白黒ですが)が挿入されています。構成は基本的には1月から12月までの1年を通して、その季節ごとに見える星座や美しい天体を著者の実体験、思い出話を交えながら紹介していきます。が、話が脱線することもしばしばあり、やや専門的な話も出てきますが私は楽しんで読めました。


本書を読んでいると、この本の著者は本当に星が好きなのだろうな、と思えます。このような好きなことを職業にできた人をうらやましく思います。さまざまな星々、銀河、彗星、流星などの話を読んでいると、自分でもちょっと見てみたいなと思うこともあります。ただ、都会ではよほど明るい星以外は見えないので、ほとんどの天体は夜間に郊外に遠征しなければ見ることができず、気軽に見ることができないのは現代の不幸ですね。夜が明るくなったことは犯罪の抑止などに役立っていますが、こと天体観測に関してはマイナスの影響が出ています。不幸中の幸いか、今年は節電で街灯や電飾が弱められたり消されたりしているところが多いですから、夜空を見上げてみるのもよいかもしれません。