ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上)

ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上) (新潮文庫)



ローマ人の物語」の第六弾は
グラックス兄弟の改革失敗から同盟者戦争終結まで。


グラックス兄弟の改革失敗とマリウスの改革成功を見ると、
グラックス兄弟はやり方が若いなぁ、という印象。
社会問題というものは特定個人の意志によって
引き起こされるのではなく、
社会システムの欠陥を原因として発生します。
グラックス兄弟自身はこれを理解する賢明さを持っていましたが、
彼らを支持する市民たちはそうではありませんでした。
欠陥を持つ社会システムに対してではなく、
その社会システムによって利益を得ている
特定の人々を攻撃対象と認識してしまいました。
その結果、社会改革という高邁な理想は嫉妬を中心とした
感情的対立を生み、暴力の衝突に発展した末に、失敗する、
というパターンを兄弟はともに繰り返します。


もちろん、大衆を動員するために、高邁な理想ではなく
具体的な標的を示して扇動する、というのも手段の一つですが、
グラックス兄弟はそれは全く意図せず、むしろ感情的になる市民に
手を焼いていたようで、支持者をコントロールしきれなかったところが
失敗要因かな。


マリウスの改革は全くの結果論。多分、本人には改革という
意識すらなかったみたいですね。
いや、これがもし意図的だったらマリウスは相当な政治家ですけど。